外国人を雇用するときには,通常日本人を雇用するとき以上に気をつけておかなければいけないことが幾つかあります。
入管法改正案によると,日本で働ける外国人の枠が広がります。新たに次の2つの在留資格が設けられます。
【特定技能1号】
条件:生活に支障のない会話ができる,一定の知識や技能を持っていること。
在留期限:最長5年
家族の帯同:不可
【特定技能2号】
条件:生活に支障のない会話ができる,熟練した技能を持っていること。
在留期限:更新可能
家族の帯同:可
この2つの在留資格が設けられますが,詳細は”政令で定める”ことになっているのでまだはっきりとした条件は示されていません。「生活に支障のない会話」がどのレベルに相当するのか,「一定の知識や技能」「熟練した技能」がどの程度まで要求されるのかなど,具体的に示されるのは政令が公示されてからになります。
a.14業種について
入管法改正案によると,在留資格が適用される業種は以下の14業種が対象となります。
【対象14業種】
1.介護
2.ビルクリーニング
3.素形材産業
4.産業機械製造
5.電気・電子機器関連産業
6.建設
7.造船・舶用工業
8.自動車整備
9.航空(空港グランドハンドリング・航空機整備)
10.宿泊
11.農業
12.漁業
13.飲食料品製造(水産加工業含む)
14.外食
b.企業に求められる対応
外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gaikokujin-koyou/01.html
仕事面以外の生活支援を充実させる
法務省入国管理局の資料によれば,「「特定技能1号」の外国人に対し,受入れ機関又は登録支援機関において,我が国での活動を安定的・円滑に行うことができるようにするための日常生活上,職業生活上又は社会生活上の支援を行う」となっています。そのため,「特定技能1号」を受け入れる企業においては,仕事を用意するだけでなく,日常生活上,職業生活上又は社会生活上の支援などを行う必要があります。
新たな外国人材の受入れに関する在留資格「特定技能」の創設について
c.外国人を雇用する際の手続き
ここでは,外国人労働者を雇用する上での実際の手続きやその流れ,ルールについて説明をいたします。
採用の目的を明確にする。
もとより,日本人を雇用する場合に比べて,手続きも煩雑になりますから,
外国人を雇用する目的(日本人よりも外国人を雇用した方がよい理由)
その外国人を雇用したときに,考えられるデメリット
をできるだけ詳しく考えておく必要があります。その上で,デメリットよりもメリットの方が大きいと判断できる場合に,リスクと共に外国人を雇用することになります。
雇用の対象となる外国人については
国籍,使用言語(母国語,母国語以外に使用できる言語とその習熟度),業務内容(職種,職責,昇進なども含む),雇用期間(雇用の継続の可能性),雇用する人数,賃金など
の条件をできるだけ詳しく考えておく必要があります。
外国人労働者の募集・採用
a.外国人労働者を募集する方法
1.net,求人誌,TV・新聞等のメディアを通じて労働者を直接募集する。
人種,宗教,国籍等による差別はしてはならないことになっています。ただし,「英語と中国語の両方が堪能な方」等のような個人の能力に関する表現は認められています。
2.自社従業員,取引先,大学からの紹介。
外国人を雇用したことの無い事業所の場合,全くの飛び込みの応募者を採用するのはリスクが大きいものです。採用する側から見ると,紹介は比較的安心できる方法です。
3.公的機関(ハローワークなど)からの紹介による方法
求職者からの相談だけでなく,事業主側からの相談も受け付けてくれます。「外国人雇用サービスセンター」では,通訳もいて,外国人の職業相談・職業紹介なども行っています。
(例) 大阪外国人雇用サービスセンター
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-foreigner/
4.民間職業紹介会社からの紹介
有料ですが,求人会社のニーズにあった候補者を紹介してもらえる可能性が高い方法です。
但し,悪質な業者もあるようですので,国内の民間職業紹介会社を利用する場合には,最低限その会社が厚生労働大臣の許可を受けているかどうかを必ず確認すべきでしょう。
特に最近は違法なブローカーがいるようで外国人労働者の中間搾取の被害が多発しているそうです。こういった違法なブローカーを利用して外国人労働者を雇用した場合,事業主にも罰則が課せられますので十分ご注意ください。
b.在留資格を確認する
在留資格がない状態で日本に滞在し続けている外国人は不法滞在として,入管法違反の”犯罪行為”になります。
このため,外国人を雇用する際には,求人に応募してきた外国人に,正しい在留資格があるかどうかを確かめなければいけません。
在留資格には個々に一定の期限があり,最初に正しく在留資格を得て入国していても在留資格の期限が過ぎて期限切れの状態となっている場合にはやはり不法滞在となります。
(参考)
在留資格の種類
「在留資格」は,「出入国管理及び難民認定法」(入管法),という法律にルールが定められており,現在では27種類の「在留資格」が認められています。
在留資格に定められた範囲で就労が認められる在留資格
外交,公用,教授,芸術,宗教,報道,投資・経営,法律・会計業務,医療,研究,教育,技術,人文知識・国際業務,企業内転筋,興行,技能,特定活動
就労が認められない在留資格
文化活動,短期滞在,留学,就学,研修,家族滞在
就労活動に制限がない在留資格
永住者,日本人の配偶者など,永住者の配偶者など,定住者
c.明確な労働条件を提示しましょう。
商習慣や文化,ものの考え方が異なります。曖昧や条件や口約束はトラブルのもとです。
すべての事業主の方には、外国人労働者(特別永住者及び在留資格「外交」・「公用」の者を除く)の雇入れ
または離職の際に、当該外国人労働者の氏名、在留資格、在留期間等について確認し、厚生労働大臣(ハローワ
ーク)へ届け出ることが義務付けらています。
(届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/index.html